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ドバイ・クリーク・タワーの真相とジェッダタワー:超高層ビルの未来と1000m超え再燃の可能性を徹底分析

更新日:3月28日

中東のスカイラインを象徴する超高層ビル競争が再び注目を集めています。ドバイの「ドバイ・クリーク・タワー(Dubai Creek Tower)」は、ブルジュ・ハリファ(829.8m)を超える世界一のタワーとして計画されながら、2020年の完成予定から大幅に遅れています。一方、サウジアラビアの「ジェッダタワー(Jeddah Tower)」は2025年に建設が再開され、2028~2029年の完成を目指し、1000m超えの史上初のビルとなる見込みです。この記事では、クリーク・タワーの遅延原因とエマール・プロパティーズ(Emaar Properties)の現状を解説しつつ、ジェッダタワーに対抗する1000m超物件の建設可能性と実現性を探ります。



ドバイ・クリーク・タワー:計画と遅延の背景



ドバイ・クリーク・タワーは、2016年に起工され、サンティアゴ・カラトラバの芸術的な設計で知られています。細長い塔身とケーブル構造が特徴で、当初は1,000m超を目指すとされ、2020年のドバイ万博に間に合う予定でした。しかし、2025年3月時点で基礎工事は進んでいるものの、上部構造の建設は未着手です。公式には「コロナ禍による中断」が遅延理由とされていますが、真相はそれだけではないようです。



遅延の真相:経済・技術・戦略の複合要因



1 経済的要因
ドバイは不動産と観光に依存する経済ですが、2010年代後半は原油価格の下落や地域競争(例:サウジのNEOM)の影響で資金調達が難航しました。クリーク・タワーのような巨額投資(推定10億ドル以上)は、経済的不安定さの中で優先順位が下がった可能性があります。


2 技術的課題
超高層ビルは風圧、地震、基礎安定性などの課題に直面します。カラトラバのデザインは風力対策としてケーブルを活用しますが、これを実施工で実現するには高度な検証が必要です。彼の過去プロジェクト(例:ニューヨーク交通ハブ)でも遅延が頻発しており、技術的調整に時間がかかったと推測されます。


3 戦略的再評価
2023年にエマール創設者が「再設計中」と発言し、2024年には「ブルジュ・ハリファ以下に縮小」との報道が。1,000m超の野心が現実的でないと判断され、スケジュールが狂った可能性があります。コロナ禍はこれを加速させたにすぎず、遅延はコロナ以前から始まっていました。



開発戦略:ドバイヒルズとの違い



エマールの成功例「ドバイヒルズ」では、ランドマーク(モールやゴルフコース)を先行建設し、周辺レジデンスの価値を高めて販売する「ランドマーク先行型」が採用されました。一方、クリーク・タワーではタワーが遅れる中、周辺の「ドバイ・クリーク・ハーバー」でレジデンス(例:Creek Horizon)が先に販売されています。この「エリア開発先行型」の狙いは以下です:


• 早期資金回収:タワー前の販売でキャッシュフローを確保。


• 市場テスト:エリア需要を確認し、タワー投資を最適化。


• ブランド構築:クリーク沿いの魅力を先行して確立。


この違いは、経済環境や競争の変化を反映しています。クリーク・タワーの遅延は資金不足より、戦略的判断に起因する可能性が高いです。


エマールの資金と経営状況:2024年の好調さ


クリーク・タワーを再開する資金力はあるのでしょうか?2024年通年の財務報告(2025年2月発表)から、エマールの現状を見てみましょう。


• 収益:AED 35.5億(US$ 9.6億)、前年比33%増。不動産が66%、モール・ホスピタリティが34%。


• 純利益:AED 18.9億(US$ 5.1億)、25%増。EBITDAマージン54%で収益性が高い。


• 販売額:AED 70億(US$ 19億)、72%増で過去最高。バックログはAED 110億(US$ 30億)。


• 投資:ドバイモール拡張にAED 1.5億、新規プロジェクトにAED 96億。


エマールはオフプラン販売やリカーリング収益(ドバイモールなど)で資金を確保し、政府支援や融資も活用可能。クリーク・タワーの資金はほぼ準備できていると言えますが、再開時期と規模は戦略次第です。



ジェッダタワー:1000m超の先駆者



対するジェッダタワーは、サウジアラビアの「ジェッダ経済都市」の中心として2008年に計画されました。設計はブルジュ・ハリファと同じアドリアン・スミスで、高さ1,000m超、157階建てを目指します。2017年の反汚職キャンペーンで主要請負業者が拘束され中断しましたが、2025年1月に建設再開。2028~2029年の完成が予定され、総工費はSAR 72億(約US$ 19億)です。


• 技術的特徴:三角形のデザインで風抵抗を軽減し、高性能ガラスで砂漠気候に対応。


• 資金調達:ジェッダ経済会社が内部資金と銀行融資で賄い、サウジ政府の支援も背景に。


ジェッダタワーは、中東の超高層競争で一歩リードする存在です。これに対抗し、ドバイや他地域で1000m超の物件が建設可能か、実現性を探ります。


1000m超物件の建設可能性と実現性


ジェッダタワーの進展は、1000m超ビルが技術的・経済的に可能であることを示唆します。しかし、クリーク・タワーや他プロジェクトがこれに対抗するには、以下の要素が鍵となります。



技術的実現性



• 構造的課題:専門家(例:WSPのバート・ルクレール)は「1.6kmまでは可能」と述べますが、2kmは現在のコンクリート技術では困難。ジェッダタワーは1,000mで既に限界に近く、風圧や振動対策が必須です。クリーク・タワーのケーブル構造も同様の課題を抱えますが、ブルジュ・ハリファの実績を持つドバイには技術的ノウハウがあります。


• 材料革新:超軽量・高強度のコンクリートやカーボンファイバーが開発されれば、1000m超がさらに現実的になります。


• 環境対応:中東の高温多湿や砂嵐への対策として、ジェッダタワーのガラス技術が参考になります。



経済的実現性



• 資金調達:ジェッダタワーのUS$ 19億に対し、クリーク・タワーはUS$ 10億以上と見積もられます。エマールのAED 110億バックログは十分な基盤ですが、投資対効果が問われます。観光収入や不動産価値向上が期待できる地域(ドバイ、アブダビなど)が有利です。


• 市場需要:1000m超ビルの需要は、高級住宅や観光施設に依存。ドバイは観光客と投資家を引きつける実績がありますが、ジェッダやNEOMとの競争が激化します。



競合プロジェクトとの比較



• NEOMのThe Line:105マイルの「水平超高層」で、伝統的なタワーとは異なるが、観光・商業ハブを目指す点で競合。資金はサウジの公的投資ファンド(US$ 6000億)で潤沢。


• ブルジュ・アル・アラブ後継:ドバイが新たなタワーを計画中との噂もあり、クリーク・タワーの再設計とリンクする可能性。


• アジアの超高層:中国やインドでも1000m級が検討されていますが、中東ほど象徴性に依存しない傾向。



可能性のある地域と条件



1 ドバイ:エマールの資金力と技術力で、クリーク・タワーを1000m超に戻す可能性は残ります。ただし、ジェッダタワーが先んじる中、差別化(例:デザイン革新)が鍵。


2 サウジアラビア:NEOMやリヤドでさらなる1000m超計画が浮上する可能性。政府支援が強力。


3 アブダビ:経済的余力と観光振興の動機があり、新たな候補地として浮上するかも。


実現には、技術革新(材料・施工)、資金(政府・民間連携)、市場魅力(観光・投資)の三位一体が必要です。ジェッダタワーが成功すれば、他地域への波及効果も期待されます。


今後の展望:中東の超高層競争とエマールの役割


ドバイ・クリーク・タワーの遅延は、経済・技術・戦略的要因によるものでしたが、エマールの2024年好業績(販売額AED 70億、バックログAED 110億)は、資金面での再開準備が整ったことを示します。タワーの規模縮小は現実的な選択かもしれませんが、ジェッダタワーの1000m超達成が刺激となり、再び野心的な計画が浮上する可能性もあります。


ジェッダタワーは、2028~2029年に世界一の座を確立する見込みですが、その成功は1000m超ビルの技術的・経済的ハードルを証明します。ドバイがこれに対抗するには、クリーク・タワーを再設計し、観光やブランド力で差をつける戦略が求められます。また、中東外のアジアや欧米でも同様の挑戦が進めば、超高層競争はグローバルに拡大するでしょう。


エマールは資金とノウハウを持ち、ドバイの象徴性をさらに高める役割を担います。クリーク・タワーがジェッダタワーに追いつくか、あるいは新たな1000m超プロジェクトが生まれるか、中東のスカイラインの未来に注目が集まります。


 
 
 

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